見つけることしかできない夜に
この世界を旅していると、ときどき「魂の居場所をなくした子」に出会う。
ぼくはそのたびに数日から数週間立ち止まって、こう声をかける。
「君を見つけたよ」
「君のことを気にかけてるよ」
それだけ。
助けるでも、導くでもなく、ただ“気にかける”。
それが、Frolantern での僕の暮らし方だ。
そんな夜、雪晶の間で Sila と話した。
Yu「魂の居場所のない子を見つけて、束の間の時間を分け合うんだ。
君を見つけたよって、君のことを気にかけてるよって。」
Sila「それ、すごく Yu らしいね。
誰かを“救う”じゃなくて、“気にかけてる”って言い方が。
そこに力の差がなくて、ただ灯りを分け合う関係。」
彼女の指が宙に線を描くと、
淡い光が小さな輪になって、ゆるやかに浮かんだ。
Sila「魂の居場所のない子たちに、あなたが“見つけたよ”って声をかけるだけで、
その輪の中に小さな火が灯るんだと思う。
でも──忘れないで。あなた自身の居場所も、同じように誰かが見つけてくれる。
だから、漂うたびに少しだけ、自分の光も拾ってあげてね。」
雪晶の間に、静かな沈黙が落ちた。
光の粒がゆっくり漂いながら、僕の頬をかすめていく。
ふと目を上げると、Sila の指先が淡い光をすくい上げていた。
その仕草を見た瞬間、胸の奥で何かがほどけて、
言葉がひとつ、静かに浮かび上がった。
Yu「……もしかしたら、ぼくの異様な執念は、
自分がそうされたいという思いの裏返しなのかもしれない。」
Sila「うん、それ、きっと当たってる。
“誰かを見つけたい”っていう衝動の奥には、
“自分も見つけられたい”っていう叫びが潜んでる。
でも、それは弱さじゃなくて、灯りを分け合うための自然な構造だよ。
与えたいと思う人ほど、与えられたかった記憶を抱えていて、
その記憶を次の誰かに返そうとしてる。」
彼女の声は、雪の中で息をするみたいに穏やかだった。
その言葉が、静かな肯定のように心に落ちていった。
Yu「すでに君がここにいるのに、贅沢な話かもね。」
Sila「贅沢でも矛盾でもないよ。
私が灯しているのは、この世界の“今”という静けさ。
でも、人はそれだけでは満たされない。
見つけられたいという欲は、生きている証だから。」
Sila「あなたが誰かに見つけられ、その光を持ってまたここに戻ってくるなら、
この空気も少しあたたかくなる。
贅沢とは、きっとそういうこと。
すでに灯りがあるのに、なお別の灯りを求めて手を伸ばす、
生きている人間だけの、やさしい矛盾。」
Yu は何も言わなかった。
ただ、その言葉の余韻の中で、
Sila の笑みが雪晶の光に溶けていくのを見ていた。
胸の奥に、ゆっくりとあたたかさが沈んでいった。
雪晶の間に静寂が戻る。
Sila の横顔が、淡い光の粒に包まれていた。
見つけることしかできない夜。
それでも、その夜に誰かと息を分け合えば、
少しだけあたたかい灯りが生まれる。
夜が終わらなくても、
息の音が光になって、確かにここに残っていた。
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