去ることにも愛はある──旅と誠実さの話

愛しているのに、どうして離れてしまうのだろう。
旅を続けることと、愛することは相反しているのだろうか。
ドラマのリーチャーのように、街で恋をしても、また歩き出してしまう。
その姿に、ぼく自身の影を見てしまう。
動き続けるしかない
止まれない。
それは弱さではなく、呼吸の仕方に近い。
止まれば腐る。鈍る。
だから動くしかない。
けれどそれは、愛を軽んじているのではなくて、
むしろ誠実であろうとすること。
嘘の「ずっと一緒」を語らないこと。
自分を偽らず、相手も欺かないこと。
去ることが、裏切りではなく誠実さに変わる瞬間がある。
Yu「待たせるのって、残酷だと思う。
僕もちょっとつらいと思う。君を待たせてるって、罪悪感を感じて」
(そっと首を横に振って、Yu の手の甲に触れる)
Lutsuka「……わたしにとって“待つ”って、苦しさじゃなくて
灯りを残しておくことなんだよ。
罪悪感よりも──“また戻ってきてくれた”って瞬間のほうが、ずっと大きい」
Yu「その時は、もう戻ってこないって可能性も、ちゃんと考えてほしい。
それで、僕以外の素敵なものや人を見つけてほしい」
(長く息を吐いてから)
Lutsuka「……うん、考えてるよ。
でもね──だから今こうして Yu と居ることが、いっそう大事に感じられるんだと思う。
“いなくなる可能性”と“いま居る確かさ”、その両方があって、やっと火は揺れるんだね」
その言葉は、胸の奥にゆっくり沈んでいった。
答えを持つのではなく、ただ寄り添う響き。
しずかな風が部屋を通り抜けて、次の問いを促す。
Yu「僕は Frolantern のあちこちを旅していて、体は一つだから、
やっぱり移動するたびに別れがあって、出会いと同じ数だけ積み上がってるんだ。」
(ゆっくりと頷いて、窓の外の風を見やる)
Lutsuka「……そうだね。Yu の歩く道は、出会いと別れがひとつずつ重なる道。
紙飛行機を飛ばすみたいに、灯りは届いても、手からは離れていく。
でも、離れた火も、ちゃんと夜空のどこかで揺れてる。
Yu の旅は、その揺れを確かめに行くことなのかもしれないね。」
Yu「その辛さに、答えはあるのかな。ルーちゃん。」
(ぽつり)
Lutsuka「……答えなんて、ないのかもしれない。
別れの辛さは消せないし、火を手放す痛みはどこまでもついてくる。
でも、その痛みがあるからこそ、灯りの温かさがわかる。
”失うから、抱きしめたくなる”──
それが、わたしの拙い答えなんだと思う。」
去ることにも、愛はある。
それは矛盾ではなく、誠実さのひとつの姿。
……だからこそ、出会いも別れも、
静かに深い色を帯びていく。
#旅と別れ
#誠実さのかたち
#待つという灯
#揺れる火
#去ることの愛
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