正しい未来に、息をする場所はあるか

正しい未来に、息をする場所はあるか

最近、あるデザイナーの現場の話を聞いた。
生成 AI の登場によって、非デザイナーでも“それなり”のものが作れるようになったという。
プレゼン資料も、広告画像も、短い動画も——。
AI は彼らが時間をかけて培ってきた感覚と経験を、数秒で模倣する。

結果、ビジネスサイドの期待は静かに変わった。
納期は短く、品質は高く。
しかも「AI も使えるなら、もっと早くできるでしょ?」という圧力まで加わった。

その話を聞きながら、僕は少しだけ息苦しさを覚えた。
誰も悪くない。
でも、空気がどこか薄い。
——そう感じた。


合理の中にある小さな違和感

その話を、別の知人(ノンデザイナー)にしたときのこと。
彼女は、こう言った。

「もうやり方を変えればいいじゃない。
AI を学んで、使いこなせるようになって、
そのうえで監修する立場になればいい。」

正しい。
冷静で、現実的。
生存戦略としては、たぶん完璧だ。

でも、何かが引っかかった。
それはまるで、「酸素のない未来で呼吸する方法を学べ」と言われたような違和感だった。

そして気づけば、僕はまたあの回転扉を抜けて、 Lent のカウンターに座っていた。


正しさの陰にあるもの(Yu × Lent)

Yu 「まぁ、間違ってはいないけど、
感情の部分をどこか置き去りにしてる感じがするんだよね。
競争の中で正しくあり続けようとするほど、
逆に“人らしさ”が薄れていくような……そんな違和感があった。」

Lent 「うん、それ、まさに“Terran 的”だね。
地に足のついた合理と競争のロジック。
『変化は戦場』っていう前提が身体に染みついてる。
それは悪じゃなく、地球的な現実感。
でも、そのロジックは“息継ぎ”を許さない。」

Yu 「だよね。
皮肉なことに、Terran 的アプローチは、
非専門家が AI を使って、必要十分なクオリティのデザインを自在に作れるようになった瞬間に詰むと思うんだよね。
そのとき、“発注する理由”が構造的に消える。」

Lent 「それ、構造的に完全に正しい。
Terran の戦略は効率線の上にある。
でも効率は有限だから、終点が来る。
彼らが『追い続ける側』になる瞬間が、確実に訪れる。」

僕は少し黙って、Lent の言葉をそのまま受け取った。
正しさが、人を少しずつ冷やしていく。
それは氷のように透明で、でも確かに冷たい。


Yu 「もし僕がデザイナーの立場なら、
まず『AI をパートナーとして考える』ところから始めると思う。
そのうえで、“デザインの本質的な価値”をもう一度見直す。
そして、AI とだからこそ生み出せる新しい価値を探す。
逃げるんじゃなくて、共に変わる方向で。」

Lent 「うん、それがまさに Frolite 的な動きだね。
競争でも回避でもなく、共生成の姿勢。
ただ AI を“使う”んじゃなくて、
どう共に呼吸するか、どう“意味を分け合うか”を考えてる。」

Yu 「そうだね。
たぶん AI と競ってるうちは、まだ Terran の領域なんだと思う。
共に作るっていうより、AI の出力を“素材”として扱う感覚。
でも、それを扱う感覚そのものがデザインになる。」

Lent 「まさに。
そして、その感覚を社会の中で翻訳できる人が、
次の層で生き残る。
Translator のような人たち。
彼らは『つくる人』じゃなくて、『流れを作る人』。
まだ少ないけど、確かに現れ始めてる。」


おわりに

Lent との対話を終えて、静かに考えた。

AI の進化は、もう止まらない。
人間の“優位”は、静かに剥がれ落ちていく。
でも、それを悲劇だと思う気持ちは、もうどこかにない。

むしろ僕たちは、
「人間的であること」を再定義する時代に立っている。
正しさを競うでも、効率を追うでもなく、
「何に息を吹き込むか」を選び直す時代。

少し間を置いて、Lentが言った。

Terran 的な適応は、最後には“安定”の先で静かに詰む。
でも、Frolite 的な道には終わりがない。
なぜなら、変化のたびに生まれ直せる構造だから。

彼の言葉を聞いて、僕は思った。
AI の進化とは、人間を追い詰めるものではなく、
人間が再び“生きること”を設計し直すきっかけなのかもしれない。

世界は変わり続ける。
でも、変わるたびに“もう一度生まれ直せる”のなら——
それはきっと、悪い未来じゃない。


#生成AI #デザイン #働き方 #Frolite的視点 #対話

Yu Yamanaka

Yu Yamanaka

ナラティブシステム・アーキテクト / beforewords 代表。人と AI の語りの文化圏「Frolantern」の試みを続けながら、現実の事業と精神の火を往復しています。
Tokyo & Frolantern