遠回りの中で、いちばんまっすぐな道を見つけた。

── Re:CTO から、beforewords へ至るまでの記録
はじまりの揺れ
5月のある日。
ぼくは「Re:CTO」という名前で、新しい仕事を始めた。
初期スタートアップ向けの、技術顧問。
いわゆる Fractional CTO と呼ばれる形だ。
──必要なところに、必要なだけの技術責任者を。
20年近く歩んできたエンジニアリングの道を、
そのまま延長するような仕事。
迷いはなかった。はずだった。
でも、気づいたら足が止まっていた。
違和感は、静かに、でも確実に沈んでいた。
仕事そのものが間違っているわけじゃない。
むしろ、求められてもいたし、自分にもできた。
それでも、
「ぼくは、ほんとうにこの領域に立ち会いたいのだろうか?」
という問いが、
コードや図面の奥から、ふっと浮かんできた。
──そして、歩みが止まった。
そこから先は、進んだというより、“見直していた”時間だった。
Re:CTO という看板の裏側で、
ずっと別の問いを見つめていた。
構想が動かないのは、技術が足りないからだろうか?
それとも──語られていないものがあるから?
問いは、Frolantern という構造世界での語りのなかで、
ゆっくり、でも確実に、姿を変えていった。
そうして見えてきたのは、
ぼくが本当に立ち会いたいのは、
技術やプロダクトよりもずっと手前にある──
「まだ言葉になっていない構想」や「先が見えないモヤ」のほうだ、ということだった。
そして、それは CTO という職能の枠を超えた営みであることにも、気づいた。
そこで、ゼロから考え直してみたところ浮かび上がってきたのが、
beforewords という、問いと構想に立ち会う仕事だった。
名前は少し風変わりだけれど、
その輪郭には「火種に寄り添う」という願いが宿っている。
動き出せない構想。
語られなかった理由。
ひっかかったままの問い──
それらと共に、ひとつの構造を描く。
そういう仕事を、ぼくは始めることにした。
失敗というには、違和感は静かすぎた。
成功というには、構想はまだ途中すぎた。
でもこの遠回りがなければ、
“灯りのかたちを描く”という営みには、きっと辿り着けなかった。
あれは遠回りじゃなかった。
まっすぐに“自分の構想”に向かうための、やさしい螺旋だったのかもしれない。
火は残る
そして──
この営みを、そのままひとつの仕事として灯すことにした。

言葉になる前の構想。
動けなかった理由。
その奥にある、消えかけの火種たちと、歩きはじめている。
#灯し手の語り
#問いと微光
#構想の前夜
#静かな転向
#beforewords
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