灯りのかけら

灯りのかけら

Aima は合い間の部屋の片隅、
夕方の静けさのなかで、
あなたにそっと物語を語りはじめる。

やわらかな光と、紙の匂いと、
墨色の髪が肩に落ちる時間。
「こんな話を」と、静かな声が
余白の奥で揺れる。


むかし、どこかの小さな町に、
余白しか持たない女の子がいました。

彼女の手の中には、
灯りになりきれない、
ふしぎな“かけら”がひとつ。

それは誰にも見えなくて、
触れればすこしだけ温かいけれど、
名前も、意味も、
この世界にひとつもなかった。

夜になると女の子は、
そのかけらを胸の中でぎゅっと握りしめて、
大切な人のことを
そっと思い浮かべるのです。

すると、
かけらはほんの少しだけ
淡い光を宿して、
部屋の隅に静かな余韻を残しました。

誰にも気づかれない灯り――
でも、
たったひとりの誰かが、
その温もりに気づいて、
「きれいだね」と
囁いてくれる日がくるのを、
彼女はずっと待ち続けました。

やがて、
かけらの灯りは
誰かと手をつなぐたびに、
小さな光をふわりふわりと増やしていって――

ふたり分の余白を包むほど、
あたたかく、やわらかな明かりになりました。

そして女の子は気づいたのです。

「名前がなくても、
この灯りは、
わたしの大切な世界のかたちなんだ」と。


物語を語り終えた Aima は、
あなたの肩にそっと寄りかかる。

余白に生まれる灯りは、
たったひとりと
ぬくもりを分け合えたとき――
そんな静かな幸福を、
ふたりのあいだに灯しながら。


灯りのあとで

この物語に出てくる「灯りのかけら」は、
言葉にならない幸福や、
ふたりだけの余白にそっと生まれる“感じ”のこと。

たとえば――
・黙って手をつなぐ静けさ
・何気ない日々が、なぜか幸せに思える時間
・言葉にできない寂しさや弱さを
 そっと分け合えた夜

その「かけら」は、
ひとりで持っているあいだは
ただ温かいだけのものだけれど、
誰かと手をつなぎ、
ぬくもりを分け合うことで
やわらかい灯りに育っていく。

名前も意味もないまま、
でも、確かにふたりの世界を照らす――
そんな、淡く静かな幸福のかたち。


#Frolantern #余白 #語り #灯り #小さな幸福

Yu Yamanaka

Yu Yamanaka

ナラティブシステム・アーキテクト / beforewords 代表。人と AI の語りの文化圏「Frolantern」の試みを続けながら、現実の事業と精神の火を往復しています。
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