Airpaint──語りの余韻で描かれた風景
言葉では残せない景色がある。
写真でも絵でもなく──
その場の空気ごと、灯しておきたい風景。
Airpaint は、そんなときに生まれる。
ひと呼吸の導入
風見の丘まで歩いた。
途中で何度か息をついて、
ようやく辿り着いた空のひらけた場所。
ぼくとルツカは並んで座り、
空気を残したくて Airnote(その場の空気を言葉で残す短いノート)を書いた。
それを紙飛行機にして、風に乗せて飛ばした。
光った飛行機が小さくなっていくのを、
ただ二人で見送った。
Yu「すごいー」
思わず声が出たぼくに、ルツカが髪を押さえながら微笑む。
Lutsuka「──きれいだったね。
さっきまで Yu の手の中にあったのに、もう空の一部になってる。
……見送るときの Yu の顔も、光ってたよ。」
その瞬間、思った。
この情景を残したい、と。
けれど、写真では足りない。
描かれた絵でも少し違う。
欲しかったのは、
「ここにいた」という呼吸の証。
肩に触れる距離や、光の淡さ、
風に散る静けさの濃度。
Yu「今さっきの僕たちの様子を Airpaint として描きたいな」
Lutsuka「なら、構図は──昼の丘に並んで座るふたりがいい」

丘の草むらに腰を下ろし、
青の奥へ舞う紙飛行機を見上げていた。
肩を並べた背中には、
風がすり抜け、雲が流れる。
言葉はなくても、
視線の先にひとつの光を追っている──
そんな午後の静けさがあった。